我が家は田舎の一軒家。周りは山に囲まれているため動物を捨てにくる人も多かったんです。
ある日、庭に来た一匹の犬は首輪もつけている状態でしたが我が家の庭から一向に出ていく気配がありませんでした。
捨て犬を判断されて我が家で飼い始めたリュウ。私以外の家族は、犬小屋を準備しリードやフードを買い揃えてあっという間に我が家に懐いたリュウ。
私は小さな頃から犬が大の苦手で、近寄ることはしませんでした。
中型犬の雑種だったリュウは、捨てられたことがトラウマになっているのか留守番をさせると帰ってくるまで吠え続けるなど不安を我慢することができませんでした。
そして、大きな音も苦手で雷や花火の音がすると父の布団の中で小さくなってしまいます。
そういう弱いところを見ているうちに、何となく散歩をはじめるようになると私にもすっかり懐き歩くペースも合わせてくれるし、人の顔色を窺って「もっと散歩したい」「違う餌を食べたい」などの要求もしてこない。
そんな姿が愛おしくて、たっぷり我が家で可愛がってあげようという話になりました。
時間があれば、観光名所の山にドライブに行き走りたいだけ走らせてみたり、何でもない日にご馳走を食べさせたり「甘えていいんだよ」と分かってほしくて。
その為か、リュウの散歩は誰が行っても喜んでくれる。父には父のペースで、私には私のペースで。
たまに、「まだ散歩行ってない」という顔で嘘をついて三回目のお散歩をおかわりする演技派でもありました。
リュウが推定10歳を迎えた頃、我が家は転機で家族の進学、就職、病気、入院などと毎日がバタバタしていました。
特に、父が亡くなる頃には家を留守にすることも増え、リュウの散歩に行く頻度も少なくなっていました。
父親の葬儀が終わり、ほっと一息付けた頃リュウは分かっていたかのようにみるみるうちに弱っていきました。
最後は、残った家族で看病と見送りをすることができました。
我が家が飼い主で幸せだったと思ってくれたら嬉しいな。私たちはリュウに家族の絆を取り戻してもらったのでとても感謝しています。